日時:2003年 6月27日(月) 午後6時30分〜8時30分

テーマ:英国の資産形成型まちづくりNPO:ディベロップメント・トラスト

報告者:宮本愛氏(仮称 コミュニティ開発法人ひとまち 事務局長)

会場:国際建設技術協会 6階会議室

出席者:海老塚、佐々木、佐々波、馬渡、大熊、石井、穐山、西松、北川、増田、原、山下、長瀬、武田、堀内、船戸川、早福、北村、成岡、西河、井澤、青木、米野、吉田、寺澤(計25人)

 

I. 報告

・1999年東京ランポ主催のツアーにて視察しイギリスのDevelopment Trustのことを知る。

・事業資産を持ち運営することで活動資金を安定して確保。運営は専門家や行政の支援を受けながらコミュニティ・マネジメント(地域住民が積極的に運営に関わる)。

・ロンドン中心市街地(インナーシティー)の剥奪状態が英国内の下位15%に含まれる地域での活動が全体の31%を占める。

※剥奪=衣・食・住などの物質面の確保、及び職業機会・コミュニティや、社会活動への参加が剥奪された状態。

 

運営の特徴(具体的事例を元に)

1)  ウェストウェイ・ディベロップメント・トラスト(WDT):高速道路高架下未利用部分の有効利用

事業面積延べ11.2ha

施設:スポーツ施設・商業店舗・保育園・ゲームセンター

運営資金の確保:民間事業に対しては市場価格にて賃貸。チャリティー団体に対しては市場価格の三分の一。

発端:地域にコミュニティ施設・児童施設を整備する為に運営団体を設立し行政から事業用地を取得。事業用地を賃貸物件として開発をし、賃貸による収益を運営基盤として活用。

2)  カスタムハウス&カニングタウン・コミュニティ・リニューアル・プロジェクト(CH&CT CRP):未利用解体予定の教会を地域施設として運用

未利用で放置されていた教会を1ポンドで取得。地域に親しまれていた教会が安易に解体されることに対して反対運動がはじまり、解体を防ぐ為に教会を歴史的建造物として登録し所有者の保存・維持義務の適用を受ける。教会団体は壊すことができないので反対運動をしていた団体へ安価に譲渡。

建物の外壁・主要構造物を残しながら教会の広い内部空間を有効利用するため、入れ子式に内部に4層のフロアーを構築して賃貸事業を運営

1階にcafé、2・3階に区画割をしたレンタルオフィス、4階は小規模事業者向けのレンタルデスク(デスクスペースの賃貸)。一部スペースを地域住民に無料で貸し出す集会場に充当。

収益より隣接する敷地の権利を取得し保育園施設を建設、保育園を運営できるNPOに対して賃貸。

3)  バンクサイド・オープン・スペース・トラスト(BOST):団地施設を運用してコミュニティ再生

1950〜1970にかけて整備された低所得者向け公共団地が荒廃してきた為団地の管理を民間に移管し、団地施設として建てられた図書館をコミュニティ施設として再活用する運営。低所得居住者に就業支援活動を行なう(IT講習など)。

4)  民間により事業優先の再開発を中止させ住民主体による事業をめざす。

公共団地を民間資本により再開発計画に対し良い住環境を維持する為に用地取得・運営を目的としたDTを設立。

強固な反対運動の為、民間企業は差開発計画を棚上げ。事業が宙に浮いた為住民主体DTによる再開発を認める。70年代から反対活動90年にDTを設立。再開発は2002年に終了

5)  団地のオープンスペースを住民で運営

殺風景な団地内のオープンスペースを緑化整備を行なう

補助金を元に運営を行ない、住民主体運営のアシスト、緑化についてのコンサルタントを行なう。緑化したスペースにcaféなどを運営して事業基盤を確保する予定。

 

II.質疑応答

アセットベースを確保するに至った動機は何か。

住民の為にNPOが活動を行なっていたが、活動資金の主財源が政府からの事業委託に移りだした。事業委託となる為、地域から望まれている内容とNPOが運営する事業にずれが生じる。政府による委託に活動が制限されない為、自立する為の活動資源としてアセットベースに活路を見出す。

ただし、アセットベースによる活動資源を得たことで地域に貢献する活動から事業主体に活動目的が移っては地域の利益にならない。それを防ぐ名目で行政から運営職員を受け入れて公共性を持たせる工夫をしている。

 

英国のNPO運営に関して

有限・株式会社として設立できる。利益を出資者・経営者へ分配をしないと定め、認定機関の確認が取れればNPOとして運営できる。

税金面などの優遇

 

EU加盟の影響について

EU加盟によりEUにより定められた住環境の改善金融支援が利用できるようになり、94年からEUのファンドを利用して設立さえるNPOが増えている。

 

事業内費用移転

NPOとして利益を受ける程度の事業範囲に活動を抑え、付帯する活動の運営は系列事業体にて運営を行う。系列事業体の運営に夜得た利益を寄付金として母体のNPOへ配分する。

等。

(文責:寺澤秀忠)