比較住宅政策研究会 議事録

 

日時 :2003年11月20日(木)午後7時00分〜9時00分

テーマ:イギリスのハウジングアソシエーションの現況

報告者:堀田 祐三子氏(神戸大学大学院)

会場: 新宿アイランドタワー19階 都市公団東京支社1901会議室

出席者:山田良治、海老塚 良吉、松岡 宏吉、大串 聡、亀村 幸泰、安川、中尾 唯史、横尾 克美、井上 紘一、佐藤 景洋、原   茂、泉 宏佳、米野 史健、北村 ともや、青木 弘、山下 恒夫、西田 敬、山本 理、柴田 好之、粟津 貴史、吉田 拓生(計22人)

 

報告

レジメに基づき報告

 

質疑

質問 ハウイングアソシエーション(HA)の財政的な基盤は? 国からの補助金があるのか? 公営住宅からHAへの移管は、有料の売却か、無償の移管か?

回答 住宅の財産額を評価して売却価格は決める。資料によれば1戸当り20万円から200万円と幅がある価格帯で売却されてきた。住宅移管を受け入れるHAに国等からの購入費の補助金は出ない。HAは、民間金融組織等から借りて購入資金を作っている。

質問 家賃は、住宅移管後に上がるのか?

回答 当初の五年ぐらいは、余りあげないという保証がある。具体的には、インフレ率に応じて、算定するが、1〜3%程度に留まる。しかし、新規の入居者の場合は、公営住宅の家賃よりは高くなる。それでも、月額4〜5万円程度である。

質問 移管の際、HAは、その費用を回収することになるのか 

回答 家賃収入により回収する。

質問 HAの経営状況はどうか?

回答 詳しく調べていないが、HAの財政の健全性については、チェックが行われる。全体としては、かろうじてOKという程度。財政的に危ないHAがあると、ハウジングコーポレーション(HAに補助金を配分する国の機関)が、経営指導を行い、その結果、今まで、HAが倒産したという例は皆無。もちろん、ハウジングコーポレーションの経営指導等の介入は多い。その結果として、HA合併や、有力グループへの参加T6N6へ対応は多い。合併は、特別な価格で行う。例えば、ニューキャッスルでは、5462ポンド、邦貨でほぼ100万円程度。マンチェスターでは、1419ポンド。タワーハンレットでは、0ポンド。というのは、あまりにもボロの場合は、マイナスヴァリューとなるから。荒廃している公営住宅を売却して、HAへ移管というときは、国の補助金がある。自治体は、勝手に民間から資金を借りることはできなかった。というのは、自治体には、住宅会計というものがあって、仕組みが違うから。バーミンガムは、公営住宅の改善資金が不足し、民間資金を使って住宅改善をできるようにするためにHAの仕組みを用いた。HAの借り入れ資金はバックに政府があるから、銀行は利率を低めに設定してくれる。

質問 HAを作ろうと言うとき、動機は何か?

回答 バーミンガムでは、公営住宅が荒廃して、治安も悪い。このため、自治体には、公営住宅の改善に関する陳情が多い。しかし、自治体には、住宅改善のための資金がない。そこで、公営住宅をHAに移管しようと言う試みを、自治体が始めた。移管するかどうかを入居者の投票で問うという仕組みである。

質問 HAの組織、経営は?

回答 HAの事務的なトップ、社長は公募する。経営方針を決める理事会のメンバーは、無給である。理事は、社会的な地位がある人、神父さん、居住者代表等がなる。昔からあるHAのギネスの場合は、一族が独占している。あるトラストでは、ボードは、チョコレート会社の経営者一族が独占しているが、それというのも、この村はチョコレート会社の企業城下町だから。小さなHAは、1ポンドを支払えば、メンバーになれる。理事に立候補もできる。そこから選挙をして理事会のメンバーを選ぶ。理事会は、決定機関であり、その下に、執行組織(実行部隊)がある。近年では、HAのビジネス化が進んでいる。その資金は、民間から調達する。しかし、素人の経営では不安があり、そのため、経営のプロを呼んで任せるようになってきた。

質問 HAは、社会的なコミュニティ再生の意義もあるのか?

回答 HAの入居者は高齢化率も高いし、低所得者比率も高い。無職も多い。このため団地の活力が低下する。そこで、テニュア・ミックス、様々な所有形態の住宅を混在させることを始めた。例えば、「賃貸だけの団地はもう建てない」とした。低価格住宅の持ち家を建設している。英国は、今、好景気なので、これがうまく回っている。HAは、持ち家や、完全に市場家賃の住宅を建設し、資金を得ている。HAが、グループ会社を作り、その会社で利益を出して、この利益で、貧者救済など、色々とやり始めている。高齢者の住宅では、LSAのような福祉住宅をやっている。また、ショッピングセンターを誘致したりしている。

質問 地方公共団体は、公営住宅ストックをもちたくないと言うことか?

回答 様々である。例えば、バーミンガムでは、労働者の力が強く、公営住宅は自治体の義務として、考えている。それで、HAへの住宅移管による改革を拒んでがんばっていた。

質問 新しい住宅管理を行うアームレングスカンバニーでは、公営住宅ストックは、自治体が保有するのか?

回答 アームレングスカンバニーでは、ストックは、自治体が保有する。

質問 公営住宅のHA化で、住宅の質が高まり、空き家ができた場合は、金持ちでも入居できるのか?

回答 所得制限は、原則としてない。しかし、もっとも住宅のニーズの高い世帯に住宅を供給する。だから、結果的に、金持ちは後回しとなる。

質問 HAの歴史を解明し、HAのボランタリーな正確がなくなると心配をしている。自生的なHAと公営住宅移管HAとは、全く異なったものだと主張している。

質問 HAのホームレス対策はどうなっているのか

回答 自治体には、入居者を指図する権限は原則として無い。しかし、HAに対して便宜を図ったりはしてきた。その分、ある程度の口出しができるので、いろいろの対応をしている。

質問  日本では、英国のHAという経験をどう学ぶのか? 日本では、どのようなNPO組織が可能か?公団が地域別の住宅NPOになるということもあるのではないか。

回答 日本に対して示唆するものについては、「住宅」2003年10月号にNPOの特集があり参照して欲しい。地域ベースでやっていくという意味では、イギリスのHAから学べるものは多い。しかし、日本と英国では歴史的背景が異なるし、ここ10年の経済状況は逆である。日本は福祉国家ではなく、土建国家。その違いは大きい。等                 

(文責 海老塚)