社会権と居住政策 ―障害をもつ人を中心にー
東京経済大学 大本圭野
1.はじめに
2.ノーマライゼーション原理と国連社会権規約委員会の「居住の権利」
(1)ノーマライゼーション原理と「生活の質」としての住居
・ノーマライゼーション概念は1950年代にスウェーデンのベンクト・ニーリエによって世界で初めて提起
・1960年代にデンマークのバンク・ミケルセンにより法制化
・知的障害をもつ人への政策原理として出発、平等の原理とは、@1日のノーマルなリズム、A1週間のノーマルなリズム、B1年間のノーマルなリズム、Cライフサイクルにおけるノーマルな発達的経験、Dノーマルな個人の尊厳と自己決定権、Eその文化におけるノーマルな性的関係、F社会におけるノーマルな経済水準とそれを得る権利、Gその地域におけるノーマルな環境形態と水準の保障
・1974年 国際障害者生活環境会議「バリアフリーデザイン」報告書。はじめてバリアフリーという言葉
・1981年 国際障害者年「完全参加と平等」:物理的・社会的障壁を除去し機会均等化に関する標準規則」
(2)国連社会権規約委員会における「居住の権利」
・国連社会権規約委員会、1991年の社会権規約委員会一般意見第4「適切な住居に対する権利」。その内容、@住居への法的安全を保障すること、Aサービス・物資・設備およびインフラストラクチュアーの利用がかのうであること。適切な住居は健康・安全・快適さおよび栄養摂取に不可欠な一定の設備を含む。
B住居費の支払い可能性(affordability)、C居住可能性(habitability)、Dアクセス可能性(accessibility)、E場所(location)、F文化相当性
3.ノーマライゼーションに基づく住居と居住環境政策
(1)スウェーデンにおける障害をもつ人の自己決定権・当事者参加
1)ノーマライゼーションに基づく施設解体
・1967年「知的障害者援護法」、1985年「新知的障害者援護法」、
・1993年の新法LLS(「一定の機能的な障害をもつ人びとに対する援助とサービスに関する法」):@「援護」から「権利の達成」、「自己決定権」、「当事者参加・参画」を明文化、A「機能的障害をもつ人」として対象拡大、すべての障害をもつ人が含まれる
・施設解体と住居保障:1979年「社会サービス法案」のなかで入所施設解体が提案、1982法制化、1994年「入所施設解体令」、1997年「特別病院・入所施設解体法」で解体の終了期限を1999年12月31日と定めた。
2)住居の保障:家賃手当、公的住宅の供給
3)ノーマライゼーションの居住政策 ー 建築基準法
・1996年、建築法の改正、学校、官公庁建築物の障壁をとり除くバリアフリーが進められる。
・1978年、全建築・全交通機関でバリアフリー化の義務づけ
(2)アメリカにおける障害をもつ人への居住差別禁止とバリアフリー化
1)公民権として障害をもつ人への居住環境差別禁止 ー ADA
・1973年「リハビリテーション法」から始まる
・1991年「障害をもつアメリカ人法」:不特定多数の人々が使用する公共的施設に差別禁止がなされた。交通・通信機関、諸施設(@旅館・ホテル、Aレストラン、B映画館・劇場、C体育館・会議場・集会施設、Dショッピングセンター、パン屋・洋品店、などの商店、E銀行、理髪店押印、薬局、コインランド、その他のサービス提供施設、Fターミナル・発着所、G博物館など、H公園、I学校、J福祉施設、Kスポーツ施設)
2)障害をもつ人への居住差別の禁止とアクセス化 ー 公正住宅改正法
・1988年、公正住宅改正法により住居による差別禁止とバリアフリー化
3)バリアフリーからユニバーサルデザインへ
・1998年6月「21世紀の設計・ユニバーサルデザイン国際会議」で、ロナルド・ロン・メイス氏がユニバーサルデザイン概念を提唱。
・ユニバーサルデザインの原理:@公平性、A自由度、B単純性、Cわかりやすさ、D安全性、E省体力、Fスペース確保、G支払い可能性、H審美性
4.日本における障害をもつ人への住居および居住環境政策
(1)障害をもつ人への居住保障の立ち遅れ
(2)居住環境のバリアフリー化 ― ハートビル法、交通バリアフリー法
(3)改正ハートビル法・交通バリアフリー法の問題点
@建物と道路・交通機関の一貫性の必要性、A社会のすべての人々を対象とする差別禁止法にすべき、B一般住宅を含めるべき、C職場、学校および商店にも対象の拡大すべき、D自治体独自のバリアフリー計画が可能であること、Eコミュニティーないにおける道路、商店街路もアクセシビリティーを可能とすること
5.わが国自治体におけるユニバーサルデザインのまちづくり
(1)静岡県におけるユニバーサルデザインのまちづくり
@政策思想と内容、年齢、性別、身体、国籍など様々な特性を違いを超えて誰もが利用しやすい、すべての人に配慮した環境、建物、設備、製品などのデザインを実現する。
A政策の評価と課題
(2)帯広市におけるユニバーサルデザインのまちづくさり
@政策思想の内容
A政策の評価と課題
6.おわりにーわが国の政府および自治体の課題
@一般法としての「居住の権利」の保障、Aバリアフリーは、障害をもつ人に限らず「社会は全てのひとのために」に沿ったものであること、B逆ノーマライゼーションの実現、C自治体の主導にもとづくホーリステックなまちづくり・居住環境づくり