住まい・まちづくりと合意

2004.02.04

まちづくり研究所 黒崎 羊二

1. 対象地区

@大幅な人口減少〜高齢化と老朽化の同時進行
A個人の努力だけでは改善できない状況
Bコミュニティバランス失調/まちの機能喪失

2. 事業目的

@安心して住み続けられるまちづくり
A住環境改善〜生活再建〜近隣関係の改善
B自律更新の条件を整える〜まちの閉塞状況を解消する

3. 合意の前提

@共同の意味
A住民の主体性
B権利者間のリーダーシップ

4. 事業責任

@まちづくりのトータルな責任
A事業施行者
B専門家

5. 合意の要件

(1)合意と調整

住民の参画のもとに事業計画を検討するとき、住民の意向に基づいて計画内容を定め、合意を確認する。住民間に対立意見があれば、それぞれの意向を調整し、計画案を修正して合意をはかることになる。しかし「計画案修正」による調整は容易ではなく、修正によって新たな反対意見が発生する。その繰り返しの結果として調整不能となり、合意が成立しない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


                                                                                                                            [図−1]           一般的な合意フロー

そこで対立意見や反対意見の調整の方策や調整の場が問われるのであるが、これに対する特効薬はない。単純に考えて調整の必要な対立・反対意見が起こらないように手だてを尽くすこと、対立・反対意見がでるような計画を作らないという程度である。

(2)意向と計画

事業化検討段階での意向把握は個別ヒアリングが中心となるが、その過程で行われる全体の協議が重要な役割を果たす。全体の協議では住民自身の問題や身近な地域の状況を検討し、そこで明らかになる問題点や課題を確認する。まちづくり計画を共同してすすめるなかで個々の改善目標が実現される可能性を見定める。

このような形で共通の認識を確かめながらまちづくり協議が進展し、住民の主体性も高められる。その反面、意見聴取と計画提案の時期が不適切であったり、計画原案が住民の意向を表面的に取り上げ、真の要求からかけ離れた内容となったときに調整不能となる。それは調整段階の問題ではなく、計画検討の前段階にある共通の現状認識と目標の設定が不十分であったとき「調整不能」となる。

(3)公共性の実態

合意の困難さは、公共性が抽象的にしか認識されないために起こると考えられ、公共性を建前ではなく、実態のあるものとして捉えることが課題となる。

住民自身の問題、身近な問題から考えて現状の問題点が基本線で一致することを認識し、そこから共通の目標を確認するといったプロセスを通して住民意向を計画に反映することができる。この個別問題から共通の課題を探ることが公共性に住民自身の問題に即した実態を与え、合意の基本条件ととしての公共性を確認する。

(4)計画の合理性

計画が達成されるまでの過程やその実現方策が見えないとき、個々の世帯にかかる影響や生活の変化などに対する疑問が起こり、疑問が解けないままに反対意見ともなる。さらに、計画の経済性や効果に対する評価も、計画の可否を判断する重要な根拠となる。

計画の実施過程ではさまざまな道筋が想定されるが、その選択を巡って多様な意見が交わされる。これらの意見の正当性は,個々の意向に基づいて確認された公共性を満足させた上で、技術的な適合をはかり、経済性やその効果の程度などによって判定される。

これらはすべて計画の合理性を示すもので、計画の実施過程がその実現方策を伴って示されたとき検証することができる。実施過程や実現方策が具体化されていない計画、つまり合理性のない計画は実現の保証を持たないだけでなく、その前段階である合意形成の基本条件も失う。

(5)計画の公平性

合意成立のための要件の第三として、前二者より具体的かつ直接的な住民の関心事は、公平性の問題である。公平性は計画や事業にかかわる選択肢を検討し、選択方法をルール化する時点でその大部分が保障されることになる。多様な条件や意向を持つ人々にそれぞれの意向や条件に適合する選択肢が用意され、個々の世帯が最も適当とする選択ができるならば、それぞれの世帯ごとに満足感が充足されることになる。

選択肢の用意と選択方法のルール化によって客観的に公平性を確保し、意向と条件に適合する選択によって満足感を得る。この両者をもって多様な参加形態のもとでの公平性を確認することができる。

以上に述べた合意の三要件を概括し、図化すると[図−2]のように考えることができる。

 

 

 

 


住民の共同

住民の主体性

公平性

 

合理性

 
 

 


                                                                                                                                      [図−2]           合意の三要件

(6)三要件に基づいた合意

先に掲げた一般的な合意フロー[図−1]は、合意の三要件を加味すると[図−3]となる。

第一段階

協議の当初段階では、個別の条件や意向を明らかにしながら地域の現状について共通の問題点を認識する。この計画が住民の主体性を確認しながらすすめること、併せて共同によって実現できる将来や可能性について理解を深める

第二段階

共通の課題・目標を設定し、個別の課題との関係を明らかにする。その中で計画の公共性を具体的に理解する。

第三段階

個別課題から共通の課題を通してそれらの実現方策とその可能性、実施過程の問題点などを検討し、計画の合理性を確認する。

第四段階

個別条件・意向や全体計画との関係のなかで必要で可能な選択肢を検討する。この検討の経過を通して計画の公平性を確認する。

以上の四段階を経て個別の条件と意向に基づいてそれぞれの選択・検討が進行し、それに併せて全体構想が計画へとまとめられる。このようなフローによれば、段階を踏んだ合意形成と計画策定が自律調整の作用によって併行して進捗する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


                                                                                                              [図−3]           三要件を確認する合意フロー

 

テキスト ボックス: 外部要因による事業計画
事業の内在的動機が不明
 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


                                                                                                                            [図−4]           合意を阻害する計画