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第116号

2012年6月8日

【編集あとがき】

 

 第116号を無事発行することができました。

 

 以下、一読者としての感想を述べさせていただきました。

 

 浅田さんの論文=民主主義の理念としては、一人ひとりの全ての人に平等に分配されている理性を前提として、各人の状況認識に基づき、適切と思う人に一票を投じ、その結果、多数をとった人が政治の代行者として政治を担う、ということだと思います。しかし、これは確かにかなり建前的な印象も受けます。「財政投融資という官僚の闇の資金源を提供している郵政を叩け」とか、「既得権にあぐらをかいている郵便局長会を叩け」といった煽情的なワンフレーズに、感情的に煽られることは否定できないと思います。「こんな自民党には、もう任せてはおけません。政権交代が必要です。」といった声に、首相がころころ変わる自民党にも「いや、まだ人材はいるのだから大丈夫だ」と思った人は、相当な自民党支持者だと感じます。

 本当に、社会全体の在り方とか、人間の在り方とかを、宗教的な側面まで考慮し、日常から真剣に、その対応策を暖めている人というのは、はたしてどれだけいるのでしょうか。場合によっては、儒教的精神に基づいて、格物致知とか、居敬窮理とか、経世済民とか、先憂後楽とか、言っていた昔の儒学者の方が、真面目さという点ではひけはとらないようにも思います。本号で、わたしは、民主主義は「科学の世界」の産物であるとしましたが、わたしとしては、そうした「科学の世界」そのものを、現代を生きる一人の人間として、どのように受け止めるべきなのか、掘り下げてみたいようにも感じています。確かに、「小泉チルドレン」とか、「小沢チルドレン」とか、政治がここまで貧困になっているのは、なぜなのかと問わずにはいられない気持ちです。

 

 薗部さんの論文=まず、次のような文言が興味深いと感じました。

 ○そのときは風景のなかに入り込んでゆき、風景と合体するかのような体験をする。それが描く快感でもあった。だから描いた〈風景〉は心に刻まれる。

 ○(見ている対象が)発散している目に見えない微粒子…風景の心のようなものと、わたしの根源…心とが交じりあって一体になったような感覚だったと思う。

 ○そもそも何かに感動するということ自体が、すでに意識をこえて、わたしたちの内奥の何かをゆり動かすことであろう。

 ○その充実性あるいは自我性…自我性とは、概念や他人の視覚を拒絶して物そのものを直視することである。自分の視覚をもって彼は描いているということ。

 ○誰の見方あるいは誰の眼でもない、彼自身の眼で世界…〈物〉を見ている、あるいは感じているという〈感覚〉である 

 ○むしろそれはもっと能動性…生きて動く根源の目、また感性というようなところもある。

 ○「僕たちには、他人の考えの表現にしたがって理解することが、むやみに多すぎるということだ」という言葉がある

 ○それは「こうした迷いこそわたしたちの生まれながらの光をくらまし」て、つまりおのれの核に根ざした視点や思考形成をくもらして「理を悟る力量を乏しくするおそれがあるものなのです。」そして「ある日決心を固めて私自身のなかに──おのれの核のなか──に入ってもまた勉強することにし、精神力をかたむけつくして、私のたどるべき道を選ぼうとしたのです」といっている。

 ○というのも、これらのことは、ある地点からはもう手本というものがなく、各自が自分で模索しなければならないからである。そして素質とか才能とかは、たしかにその影響はあるかもしれないが、ただそのままでは成長も開花もおぼつかない。やはり意志によって鍛えられ育てられなければならない。

 

 わたしは、本号で、「科学の世界」の本質は客観であり、人間は神とは違って部分的にしかそれができない、と述べました。そして、この「科学の世界」というのは、近年になってヨーロッパで見いだされたものであり、東洋人であるわたしたちには、まだまだ違和感のあるものではないかという印象を受けます。

 しかし、近年、質量を生み出すヒッグス粒子とかの存在が取り沙汰されていますが、宇宙に存在する全ては、もともとは一体のものであったということも言えそうです。

 「宗教の世界」、「統治の世界」とは別に「美意識の世界」というものもあるのかもしれません。そういう世界におていは「生命としての欲望の世界」と「美意識の世界」とは、どのような位置づけ的関係になるのでしょうか。生命としての欲望と美意識とは、ある意味で合体願望のようなもので、同一のものかもしれません。

 浅田さんの問題提起とも関連するみたいで、興味深いものを感じました。



「負けること勝つこと(72)」 浅田 和幸

「問われている絵画(107)-絵画への接近27-」 薗部 雄作

「「科学の世界」をどう位置づけるか」 深瀬 久敬

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編集発行:人間地球社会倶楽部

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