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第130号

2016年3月17日

【編集あとがき】

 

 浅田さんの論文=アメリカが、スーパーパワーとしてのゆとりを失いつつある理由は、行き過ぎた金融に起因する所得格差の拡大や中国の台頭による経済力の低下などではないか、と感じます。人々のゆとりが失われると、かつての教養豊かなドイツでさえ、ヒトラーの独裁国家を受け入れてしまったという事実が怖いと思います。ヒトラー台頭の背景には、第一次世界大戦で英仏に多額の資金援助をしたアメリカのウォール街の金融界が、その返済を求め、それがドイツへの巨額な賠償金になったことがあると聞いています。アメリカは既に、世界の警察官たることを放棄していますから、これから、地球社会は、いかにして、国際紛争や環境保全などの難題の解決に取り組んでいくのか、考えさせられます。中国は中華民族としての誇りの復権に邁進する印象ですが、世界史全体を踏まえた世界全体の今後の在り方までに配慮は回らないようです。人類が育んできた、弱者への配慮や共同体運営の感性といったものが影をひそめるなかで、単なる多数決ではない、全人格的な客観能力による運営への道筋がいかにしてつけられるか、見守りたい感じがします。

 

 薗部さんの論文=人間は生きていくために、日々、目先のものに追われていると思います。学生は学生ローンの返済のためのアルバイトに追われ、移民に仕事を奪われた人は別の仕事を見つけなければなりません。一方、人間のなかにある無意識のこころの在り方や社会の在り方は、数百万年という気の遠くなるような時間のなかで醸成されてきたものであり、そのなかの善悪を識別することは並大抵のことではないだろうと思います。芸術や哲学は、そういう識別を時代の状況や流れのなかで行い、その方向性を指し示すことを使命としていますから、困難を極めることになると思います。現代社会の変貌の速さは、人類がかつて経験したことのないものだと思いますし、現代のコマーシャリズムは、あらゆる欲望を、これでもかと思うほどに刺激してきます。そういうものに麻痺した人々に、時代の深遠にあるものを提示しても理解してもらえるという確証はありません。しかし他方、人間の感性や客観能力は、これだけの大脳をもち、長い時間の経緯のなかで鍛えられてきたという見方をすれば、今後、さらに鋭い観察を通しての対応も可能なのではないかという印象も持ちます。ショーペンハウアー、伊藤若冲、貝原益軒らの志にみならい、現状に流されることなく、問い続けていくことが大切なのではないか、という印象を持ちました。



「負けること勝つこと(86)」 浅田 和幸

「問われている絵画(121)-絵画への接近41-」 薗部 雄作

「感性から全人格性の時代へ」 深瀬 久敬

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編集発行:人間地球社会倶楽部

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