浅田さんの論文=最近、なにか反知性的な傾向が、世界的に増えてきているような印象を受けます。欧州の反移民運動、米国のトランプ候補、そして、残念ながら日本の安倍首相にもそのような気配が感じられます。人間にとって本能的な行動は、ある意味では必然的なものですから、やむを得ない感じもします。日本と第二次世界大戦との関連では、西欧発の「知は力なり」の植民地主義や帝国主義の流れに抗するなかで、いつのまにか調子になりすぎたという印象を受けます。今日においては、中国や韓国の企業が実力をつけ、日本の産業競争力の強化にどう取り組んでいくべきかとか、なにか得体のわからない金融の世界の金余りのなかでどのような金融政策をとっていくのか、といった点が気がかりです。その辺の状況認識をごまかして、人気取り的な対応を計ることが最悪だと感じます。客観的で正確な状況認識は、利己的な気持ちに支配された場合などでは、非常に困難なものとなりますが、プロ棋士を打ち負かすほどの人工知能が開発可能な現在においては、人工知能の活用も排除すべきではないような気持ちにもなります。人工知能にどのように学習させるかなど、気になる点はあるのですが。
薗部さんの論文=生きものにとって五感のなかでも視覚は、もっとも情報量に富んだものだと思います。そうした五感から得た情報を処理して、生きものは状況を把握して、生きる戦略や戦術を繰り出し生きているのだと思います。その際、獲得した情報は、そのままではだめであり、意味論や価値観、そして、解釈などを踏まえて処理されます。視神経が得た視覚情報も、かなり大胆な取捨選択や補完など、すばやく適切に行動に移せるような処理が脳で行われるようです。絵画に描く際にも、こうした様々な作者の意味論や価値観や解釈が反映されるのだと感じます。生きものとしての意味論や価値観は、唯一絶対のものは存在しないようですから、画家の描き方も、千差万別ということになるのでしょう。若冲の絵から受け取れる観察力の凄さには圧倒されますが、なにを考えてそのような描き方になったのかは知るよしもなく、不思議に感じています。最終的な形とか到達点といったことについても気になりました。
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