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第134号

2017年3月22日

【編集あとがき】

 

浅田さんの論文=トランプ大統領の登場は、米国社会における白人中産階級層の不満が爆発したものといった説明もあります。かつては繁栄していた産業の停滞、移民の流入などによって、失業や低賃金の仕事が増えているようです。これは、ヨーロッパ諸国も同じようです。自国第一主義、極右政党、ポピュリズムが蔓延しています。日本は、相変わらずガラパゴス状態で、こうした潮流からは免れているようです。しかし、中国、北朝鮮などからの軍事的脅威は、増しているように感じられます。冷戦構造の崩壊後も、米軍が駐留し続けたのは、日本の再軍備化による米国への脅威を警戒したためとも聞いています。

 日本は、こうした世界の流れのなかで、どのような在り方を目指すべきなのでしょうか。米国の軍事力にただぶら下がっていればよいというのは、確かに安易すぎる印象です。科学技術の急激な進展、産業競争力の激突、軍事力の整備など、多角的な視野から熟慮し、国民の納得が得られるような舵取りが大切になっていくように感じてなりません。日本人のよい特質を、充分に活かせるような状況が作られることを期待したいと思います。

 

 薗部さんの論文=絵画というと、お城の大広間の襖に描かれたものとか、屏風に描かれたものとか、茶室や書院の床の間に下げられた掛け軸とか、戦争画とか、そういったものを想起してしまいます。これらの絵画は、その役割が分かりやすいと思います。それに対し、近代の絵画は、一人の人間としての作者自身が対象の奥深くに見たもの見えたものを、純粋に表現することを通して、鑑賞する人と人間存在の自覚の深まりを共感、確認しあうといった点を目標にしているのではないか、と感ずることがあります。戦後の日本は、まさに一人ひとりの人間としての深い自覚が重視されるという「時代の気運」があったのだと思います。

 私の本文でも書きましたが、全人格的な権威というものを近代社会は排除し、科学的な視点からの真実を重視する方向に向かった訳ですが、果たして、そこに人間存在としての自覚の深まりがあるのか、よく分からない気持ちです。科学の視点は現象界を対象としますから、人間を現象として見て、なにが見えるのかという疑問です。生命の存在の根源にも関係するようでもあり、むずかしい問題だと感じます。



「負けること勝つこと(90)」 浅田 和幸

「問われている絵画(125)-絵画への接近45-」 薗部 雄作

「人間存在の自覚の深まり」 深瀬 久敬

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編集発行:人間地球社会倶楽部

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