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第138号

2018年4月12日

【編集あとがき】

 

 浅田さんの論文=森友学園問題には、私も本号で少し触れましたが、安倍首相や首相官邸のもとで、特定の価値観に基づいて、組織の論理によって国全体を主導する傾向があるように感じます。その論理は、美しい日本とか、愛国心とか、人間としての深い教養を大切にするのではなく、国家という閉じた組織のなかでの価値観に根ざしたもののようであり、一抹の不安を覚えます。新たな「高等学校学習指導要領」の改訂案では、国を愛する人を育てるといった指針もあるようです。

 世界を見渡すと、英国のEU離脱、トランプ大統領の米国、中国の習近平体制、プーチン大統領のロシアなど、いずれも閉じた国家という組織の論理を核としている印象です。こうした閉じた組織の論理の締めつけが強いなかでは、取り繕いのための論理が組織内に跋扈せざるをえないのだと思います。

 人間の弱さ、小ささを直視し、生命全体に配慮したような社会運営を期待したいと思いますが、道のりはかなりきびしい印象です。

 

 薗部さんの論文=一般教養的な読書とか思索の時間というのは、かつては社会的に認められていたのだと思いますが、最近はネットの普及によって短い文章による条件反射的なやりとりが主流となっているような印象も受けます。人間存在の根底に関わるような読書や思索体験の時間は、今日の世界では、どのようになっているのか、やや気になります。

 哲学書を通して、刑法の内容が近代の哲学を通した人間観に影響されていることを知りましたが、そうした人間観の深化が、社会の在り方に深く影響していることは興味深く感じます。セネカの著作などは、人間の生き方とか、日常の時間の過ごし方とか、科学技術の知識とかとは全く別の世界の知識を伝えるものなのだろうと思います。

 ネット検索技術の高度化によるのだと思いますが、歴史上の古文書の新たな発見があったり、プロの囲碁棋士の読みをもしのぐ人工知能が登場したりと、知の世界も、これからどのように変化していくのか、かなり戸惑いの日々です。

 「クロガネ太郎」については、ネット上に画像が一つありました。軍国日本の強欲を風刺したものではないか、という印象も受けました。子供のころに読んだマンガによって正義感とはどのようなものかといったことについて、無意識のうちにかなりの影響力を受けているのかもしれません。



「負けること勝つこと(94)」 浅田 和幸

「問われている絵画(129)-絵画への接近49-」 薗部 雄作

「組織の論理と人間存在の小ささ」 深瀬 久敬

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編集発行:人間地球社会倶楽部

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