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第159号

2023年8月5日

【編集あとがき】

 

 浅田さんの論文=たいへんむずかしい課題だと思いますが、まず江戸時代の権威主義に基づく統治の社会を考えてみます。その社会では、お米の収穫量が社会のゆとりを決めることになります。収穫されたお米のかなりの部分を中央権力者がとり、その残りが身分などの社会的地位に基づいて分配されることになります。それが、社会の秩序と安定の維持につながります。そこでは、人間存在の意味や価値への問いかけが日常的に行われ、そうした社会体制の正当性を確認すべく、祭りや仏典の解釈などが行われています。それは、江戸時代に建てられた神社仏閣の多さに現れていると思います。わたしの住む目黒区や近隣の品川区、港区などには、こんなにたくさんのお寺がなぜ建てられたのか不思議に思うことがあります。

 一方、近代社会では、便利さや快適さを実現する物質が次から次に開発量産され、テレビコマーシャルなどによって人々の欲望が刺激され、こうした資本の論理は止まるところをしりません。経済成長期には給料がどんどんあがり、人々はそれを使い新しい住居に引っ越したり、新しい家電製品を購入することに周囲と競争したりしていました。

 しかし、こうした近年の資本の論理の止まるところをしらない活動を通して得られる物質に、疑問が投げられたり、その生産される製品によって子供の育成によくない影響が及ぼされたり、環境汚染の原因になったりするといった課題が次々に見いだされるようになりました。

 こうした状況のなかで、資本を管理したり分配したりするルールを変更するべきではないかという指摘があるのではないかと思います。

 そのときに、人間の個の尊厳を互いに尊重しあうとはどういうことかとか、人間が生きている時間がwell-beingに満たされているかといった新たな視点が考慮されるべきではないかというのが、わたしの見解のように思います。社会主義がその辺をどのように考えるのか、参考にしたいと思っています。        

 

 薗部さんの論文=人体を構成するたくさんの細胞のひとつひとつが、どのようにしてその場での固有の役割を果たしているのかとか、体内に潜んでいる腸内細菌やウイルスがどのような影響を私たちに及ぼしているのかとか、交感神経と副交感神経がどのように活性と沈静のバランスをとっているのかとか、私たち自身、自分の身体がどのような在り方をしているのか、疑問はつきません。さらに、他の生き物も、それぞれに固有の巧みな生存戦略を用いているように思います。こうした膨大な種類の生き物のそれぞれの生存戦略を研究することは、興味深いものになると思います。こうした研究の成果が人間存在の意味や価値に、ある程度の示唆を与えてくれることになるのではないかと期待したいと思います。


「負けること勝つこと(115)」 浅田 和幸
「問われている絵画(150)-絵画への接近70-」 薗部 雄作
「地球社会のこれから」 深瀬 久敬
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編集発行:人間地球社会倶楽部

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