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第162号

2024年5月20日

【編集あとがき】

 

 第162号を無事発行することができました。

 本号をもちまして、編集者等の高齢化、経済的状況などを鑑み、紙面による作成配布、および、itscom webへの掲載は最後とします。

 今後は、下記のURLに、掲載するようにします。

 https://hgsc-2016.cocolog-nifty.com/blog/

 掲載は、掲載依頼があれば基本的に、論文毎に掲載(筆者紹介、感想文、等を含む)しますが、3カ月毎(予定。2 月末、5 月末、8 月末、11月末) に確認、掲載するようにもします。

 また、掲載は寄稿者の意志によるものとし、謝礼はなしとします。

 これまでのみなさまからのご高配に深く感謝いたします。

 

 

 『浅田さんの論文』

 いろいろ考えさせられました。

 念頭に、共同体社会の理想的な在り方として、一億総中流意識が浸透した社会があるように思います。そうした社会では、競争意識が希薄であり、平穏をよしとする風潮がみなぎっているのでしょう。余計ですが、古代中国の理想国家とされた堯舜を連想させられます。そうした国家は、全体を取り仕切る体制が存在する社会主義国家がよく該当するのでしょう。

 では、かつて一億総中流を具現化した隠れ社会主義国家日本は、なぜ、崩壊したのでしょうか。米ソ冷戦構造の崩壊、グローバル化の浸透、DXなどの技術革新、人口動態の変化、などがその要因として挙げられるでしょう。問題は、なぜ、日本の社会はこうした変化にうまく適応していくことができなかったのかということだと思います。

 日本社会は、人口動態の変化のなかでも共同体意識は強く安定指向であり、成功体験から抜け出すことが困難で、技術変化に社会体制を充分調整することができなかった、と言えるのではないでしょうか。こうした傾向は、日本に限るはなしではなく、世界的な傾向であり、そのため、新自由主義のような刺激的な対応を取り入れざるをえなかったのかもしれません。ソヴィエト連邦の崩壊も科学技術の進歩にうまくついていけなかったことが要因として考えられます。

 これからの社会の技術革新は生成AIをはじめ画期的な変化をもたらす可能性があり、そうした様々な変化に柔軟に対応していける社会であることが肝要でしょう。そして、そのためには権威主義的な統治では手が回らず、一人ひとりの個の尊厳を尊重しあい、とがった人材もうまく活用できる多様性を保持できる社会であるべきだと思います。

 そうした体制は社会主義のもとでも可能だという見方もあるのかもしれません。しかし、それは開かれた社会にはならないと思います。100%開かれた社会は、無秩序化し安定性を保てないのではないかという見方もありそうです。しかし、すこしでも閉鎖的な仕組みを作るとそこから権威主義の芽が芽生え、個の尊厳に制約がかかってしまうのではないでしょうか。熟慮の仕組みのもとで、人間の英知のみせどころになると思います。

 

 『薗部さんの論文』

数万量子ビットの量子コンピュータが10年後くらいに実用化されると、生成AIのための深層学習能力が飛躍的に高まり、AIが人類の知識を上回ると言われています。

 こうした状況下では、一人ひとりの独創性が問われることになると思われます。権威主義的な体制のなかで、同質性とか予定調和を良しとするような村社会的生き方は無価値化してしまう可能性があるように思われます。

 そうしたとき、その人の独自性、言い換えればその人の主体性はなにか、という厳しい問いに向き合うことになります。

 わたしが思うに、それはなにか高度に学問的あるいは芸術的に掘り下げられたものである必要はないのではないかと思います。自分なりの納得を人生のなかでその人なりに紡ぎだすといった姿勢が問われるのではないでしょうか。


「負けること勝つこと(118)」 浅田 和幸
「問われている絵画(153)-絵画への接近73-」 薗部 雄作
「日本社会の民主主義への覚醒に向けて」 深瀬 久敬
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編集発行:人間地球社会倶楽部

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